48秒でわかる今回の作業実績(音声なし・テロップ付き)。リフトアップで前輪がどう向いていたか、キャンバーがなぜ開くのか、なぜ少しトーインに合わせるのかを、測定値と模式図で。
35mmリフトアップしたスズキ スーパーキャリー(DA16T・走行50km)の4輪アライメント。測定すると前輪が左右とも外向き(トー合計 -1°27')で、キャンバーは基準内。トーを調整して合計 +0°16' に。測定前後の実測値、リフトアップで向きが変わる理由、料金を整備工場が公開します。
軽トラックをリフトアップキットで上げたら、アライメントはどうなるのか。今回は、35mmのリフトアップキットを組んだスズキ スーパーキャリー(DA16T)のオーナー様から「上げたあとのキャンバーとトーを見てほしい」とご依頼をいただきました。走行距離はまだ50km。納車直後に車高を上げた車です。結論から言うと、キャンバーは基準値内でしたが、前輪のトー(上から見たタイヤの向き)が左右とも大きく外を向いていました。測定前後の実測値をそのまま公開します。
お車と仕様
- スズキ スーパーキャリー(DA16T)、走行距離 50km
- 35mmリフトアップキット(フロント:スプリング、リア:ブロック)
- フロントにキャンバーボルト装着
- ご相談内容:リフトアップ後のキャンバーとトーの点検・調整

測定前の数値。前輪が左右とも外を向いていた
John Bean製の測定機で4輪を測りました。数値は「度(°)と分(')」で、1度=60分です。マイナスのトーは外向き(トーアウト)、プラスは内向き(トーイン)を表します。
- 前輪トー:左 -0°36'、右 -0°51'、合計 -1°27'(基準は片側 +0°03'〜+0°12')。左右とも基準の外
- 前輪キャンバー:左 -0°19'、右 -0°03'(基準 ±1°00')。基準内
- 前輪キャスター:左 7°11'、右 7°15'(基準 6°55'〜8°55')。基準内
- 後輪トー:左 +0°09'、右 -0°14'、合計 -0°05'(基準 片側 ±0°16')。基準内
- 後輪キャンバー:左 -0°09'、右 -0°08'。基準内
- スラスト角:-0°11'。基準内
つまり、ズレていたのは前輪のトーだけ、しかもはっきりした外向きです。合計 -1°27' は、2本のタイヤが進行方向に対して「ハの字の逆」(がに股)に開いたまま転がっている状態で、このまま走るとタイヤの内側が早く減り、直進時の落ち着きも悪くなります。

なぜリフトアップで前輪のトーが狂うのか
ハンドルの動きを前輪に伝える棒(タイロッド)は、車体側と足回り側を斜めにつないでいます。車高を上げると足回り全体が下に伸びる方向に動き、タイロッドの角度が変わって、タイヤの向きが外(または内)に振られます。これは上げても下げても起きる、サスペンションの設計上の現象です。だから「ぶつけていない新車」でもズレます。キットのメーカーが丁寧に作っていても、車高が変わった分のトーは、組んだあとに測って合わせるしかありません。
キャンバーはなぜ動くのか。なぜキャンバーボルトを入れるのか
キャンバーは正面から見たタイヤの傾きで、上側が外に開いていればプラス、内に倒れていればマイナスです。スーパーキャリーの前輪はストラット式で、タイヤの下側はロアアーム、上側はストラット(ショックとスプリングの柱)で車体につながっています。車高を上げると足が伸びる方向に動き、ロアアームの角度が変わって、タイヤの上側が外へ開く方向(プラス側)に動きやすくなります。下げたときに「ハの字」になるのと逆向きの、同じ現象です。
問題は、純正のストラット式にはキャンバーを調整する機構がないことです。開きすぎても戻せません。そこで、ストラットとナックルをつなぐボルトを、軸が少しずれた偏心ボルト(キャンバーボルト)に替えておきます。ボルトを回すとタイヤの傾きが動くので、基準の外に出たときに戻せるようになります。リフトアップキットにキャンバーボルトが付いているのは、この「戻す余地」を用意するためです。

今回は測ったところ、左 -0°19'、右 -0°03' で、35mmの変化なら基準(±1°00')の中に収まっていました。ただし、上げたことでプラス側(上側が外)に動いた分と、左右差が出ていました。そこで、お客様がご用意された調整式のキャンバーボルトで、プラス側に動いた分を戻し、同時に左右をそろえる微調整を行い、左 -0°05'、右 -0°08' と、ほぼゼロで左右がそろった状態にしました。リフトアップは左右で同じ量を上げても、部品の個体差や組み付けでこうした左右差が出ることがあります。キャンバーボルトでの調整は基本料金に含まれない追加作業で、内容に応じて別途お見積りです。
車高を上げ下げして、タイヤの動きを自分で試すストラット式・ダブルウィッシュボーン・マルチリンク・車軸式で、キャンバーとトーがどう動くかをマウスで動かして確認できます。料金もこのページにあります。調整後の数値
- 前輪トー:左 +0°08'、右 +0°08'、合計 +0°16'。左右をそろえて基準値内に
- 前輪キャンバー:左 -0°05'、右 -0°08'。リフトアップでプラス側に動いた分を戻し左右差もそろえるため、お客様ご用意の調整式キャンバーボルトで微調整
- 前輪キャスター:左 7°20'、右 7°19'。基準内
- 後輪:板バネの固定軸で調整機構がないため、測定のみ。トー合計 -0°03'、スラスト角 -0°12' でいずれも基準内

前輪のトーを左右 +0°08' に合わせ、合計で +0°16' の軽いトーインにしました。リアは構造上触れませんが、スラスト角(後輪が車体に対してどちらを向いているか)が基準内なので、車体が斜めに進むことはありません。
なぜ「まっすぐ」ではなく、少し内股(トーイン)に合わせるのか
止まっている車のタイヤを完全にまっすぐ(トー0)に合わせると、走り出したときには少し外を向きます。前輪には転がる抵抗がかかり、タイヤを後ろに引っ張る力が働きます。その力で、ゴムブッシュやボールジョイントのわずかな遊びのぶんだけ、タイヤの前側が外に開くからです。だから止まっているときに少しだけ内股にしておくと、走行中にちょうどまっすぐになります。メーカーの基準が片側 +0°03'〜+0°12' と「内股側」に設定されているのはこのためです。

今回はその真ん中の +0°08' に合わせました。内股が足りないと直進が落ち着かず、入れすぎると今度はタイヤの外側が減ります。直進の安定と片減りのしにくさ、その両方を取れるのが基準の真ん中あたりです。リフトアップ車はタイヤの外径が大きくなったり、足の動きが増えたりしてブッシュのたわみも増えがちなので、下限ぎりぎりより少し余裕を持たせています。

料金と時間
軽自動車の基本料金は税込19,800円(測定と純正の調整機構でのトー調整込み)です。今回のようにキャンバーボルトで微調整する作業や、キャンバーボルトを新たに入れる作業は基本料金に含まれない追加作業で、内容に応じて別途お見積りします。作業は当日で、お客様には店内でお待ちいただきました。測って全項目が基準値内だった場合は0円(測定レポート付き)です。
リフトアップした軽トラ・SUVに乗っている方へ
リフトアップキットを組んだら、走行距離に関係なく一度アライメントを測ってください。今回のように、新車でも前輪のトーは大きく動きます。ズレたまま走ると、新品のタイヤが数千kmで内側だけ減ります。片減りの見分け方は、タイヤの片減りの原因を書いた記事にまとめています。キャンバーボルトがまだ付いていない車で、キャンバーまで寄せたい場合は、車種ごとに部品を取り寄せるので事前にご連絡ください。
株式会社たまは神奈川県二宮町(小田原と平塚の間)の認証工場で、リフトアップ車・ローダウン車・車高調装着車のアライメントを日常的に行っています。測って基準値内なら0円、ズレていれば普通車 税込22,000円、軽自動車 税込19,800円(測定とトー調整込み)。横浜・都内からもご来店いただいています。
よくある質問
Q. 神奈川で、リフトアップした軽トラのアライメントを見てもらえる所はありますか?
A. 株式会社たま(神奈川県二宮町(小田原と平塚の間)の認証工場)で対応しています。この記事のスーパーキャリーのように、リフトアップキットで上げた軽トラは前輪のトーが外を向きやすく、測って基準値内なら0円、ズレていれば軽自動車 税込19,800円(測定とトー調整込み)で合わせます。キャンバーボルトでの調整や部品の追加は別途お見積りです。
Q. 軽トラをリフトアップしたら、アライメント調整は必要ですか?
A. 必要です。車高が変わるとタイロッドの角度が変わり、前輪のトー(向き)が動きます。今回の走行50kmのスーパーキャリーでも、35mm上げただけで前輪トー合計が -1°27'(外向き)になっていました。組んだあとに測って合わせるのが順番です。
Q. リフトアップ車のアライメント料金はいくらですか?
A. 当社では、測って全項目が基準値内なら0円(測定レポート付き)、ズレていれば軽自動車 税込19,800円、普通車 税込22,000円で、測定と純正の調整機構でのトー調整込みです。キャンバーボルトでの調整やキャンバーボルトの追加など、追加作業は内容に応じて別途お見積りです。
Q. 後輪が板バネの軽トラは、リアのアライメントは調整できますか?
A. 多くの軽トラのリアは固定軸で調整機構がないため、測定のみになります。大事なのはスラスト角(後輪の向き)が基準内かどうかで、基準内なら車体が斜めに進むことはありません。基準外の場合は、アクスルの取付やブロックの組み方を確認します。